人は民主主義をさも大切な、ほとんど神聖なもののように言う。だが実践してみると、それは何よりまず退屈で、知的刺激がない。何万何十万の民が声高に己の不平不満を言うことにより、成り立つ主義だからであろう。民主主義の下では「問題」は大きくなるが「人」は小粒になる。多数決や妥協からは輝きが発しない。 独裁は違う。独裁体制は、常にピシッとしている。権力は一点に集中し、すべて単純明快で美しい。戦後日本にも、凄い独裁者がいた。連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥である。 彼は戦犯を引っ捕え、天皇の訪問を受け、戦時中の指導者(新聞社では編集局次長以上)を全員クビにし、憲法を与え、朝鮮戦争が起きるや共産党の幹部らをレッドパージした。その間、一度も民情視察などしなかった。あの改革を民主主義でやっていたら、戦後日本は今日のイラクみたいな混沌に陥っていただろう。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン