金正恩「国防委入り見送り」の内実

執筆者:平井久志 2011年4月11日
エリア: アジア

 北朝鮮は4月7日、最高人民会議第12期第4回会議を開催した。注目された金正日(キム・ジョンイル)総書記の3男・金正恩(キム・ジョンウン)党中央軍事委副委員長の国防委員会の第1副委員長や副委員長への就任はなく、「後継体制」づくりの急進展はなかった。
 最高人民会議の議題の1つであった「組織(人事)問題」における決定は以下の4項目であった。
①全秉浩(チョン・ビョンホ)を国防委員会委員から外し、朴道春(パク・トチュン)党政治局員候補を国防委員にする。
②人民保安部長に李明秀(リ・ミョンス)国防委行政局長を任命する。
③最高人民会議法制委員長に張炳奎(チャン・ビョンギュ)最高検察所長を選出。
④李泰男(リ・テナム)副首相を病気のため解任する。
 北朝鮮の公式報道は2月後半から、金正恩を党政治局常務委員である崔永林(チェ・ヨンリム)首相や李英鎬(リ・ヨンホ)軍総参謀長より先に紹介するなどし、金総書記、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長に続く序列3位の扱いをしてきた。こうしたこともあり、後継体制構築のために3男、金正恩が国防委員会の第1副委員長か副委員長に就任するのではないかという見方が大方のものとなっていたが、現実はそうならなかった。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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