大震災が起きた3月11日以来、地元紙の一記者として現場の報道に携わってきた。東北の南北にどこまでも廃墟の風景が続いた海岸線、誰もが被災者となり、家や働く場、家族を失った住民たち。地方紙の記者にとって、それらの土地は3.11の以前も郷里であり、人との出会いの縁や思い出の深い赴任地であり、地元のまち興しや農漁業、東北で生きる価値ある仕事や文化を生み出そうと頑張る人たちを取材して歩いてきた場所である。
インパクトのある写真や悲劇のストーリーを切り取ろう、などと思ったことはない。3.11のはるか以前から知る「あの人は、どうしたか?」「あの村の夢はどうなったか?」「あの集落は無事だろうか?」という問いから出発し、人々が「何を失い、これからどう生きようとしているのか?」を伝えようとしてきた。3月22日付から72回を重ねる河北新報社会面連載「ふんばる」のデスク兼取材者として。こうした作業は、1897年の創刊以来、記者が受け継いできた東北の歴史の記録であり、被災者の声を読者や他地域の支援の志へとつなぐ応援でもある。

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