北朝鮮「先軍」掲げながら「先党」(上)着々と進む軍再編

執筆者:平井久志 2013年9月4日
エリア: アジア

 北朝鮮では8月28日は「青年節」だ。中央人民委員会は1991年2月1日に政令を発表し、8月28日を「青年節」に制定した。これは金日成(キム・イルソン)主席が抗日パルチザン闘争を展開していた時期の1927年8月28日に朝鮮共産主義青年同盟を結成したとされる日を記念したものである。この日は正式の休日ではないが、工場などでは半休になったり、休日にしたりし、各種のレジャー行事、スポーツ競技大会や野遊会などが催される。制約の多い北朝鮮の青年たちが、少しはめを外して青春を謳歌する日でもある。

 

「青年節」に分かった軍部の変化

 サッカーを観戦する金正恩氏(前列右から2番目)。そこから左3人目が張成沢氏、その左横が李永吉氏 (C)AFP=時事
サッカーを観戦する金正恩氏(前列右から2番目)。そこから左3人目が張成沢氏、その左横が李永吉氏 (C)AFP=時事

 党機関紙「労働新聞」8月29日付は1面、2面を使って、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が8月28日に金日成競技場で行なわれた「たいまつカップ」A級男子サッカー決勝戦を観覧したと報じた。決勝戦は「朝鮮人民軍4.25チーム」と「労農赤衛隊先鋒チーム」の間で行なわれた。試合は2対2で延長戦に入った。延長戦では両チームとも無得点で、PK戦にまでもつれ込み、結局、先鋒チームが勝利した。決勝戦にふさわしい好ゲームで、シュートのたびに観客は立ち上がり歓声が上がった。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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