「張成沢粛清」のトラウマ抱え「唯一領導体系」強化へ

執筆者:平井久志 2014年1月8日
エリア: アジア
 1月1日、「新年の辞」を発表する金正恩氏(写真は朝鮮中央通信が2日に配信)(C)EPA=時事
1月1日、「新年の辞」を発表する金正恩氏(写真は朝鮮中央通信が2日に配信)(C)EPA=時事

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が2014年元日に「新年の辞」を肉声演説で発表した。昨年、金日成(キム・イルソン)主席の1994年の「新年の辞」以来19年ぶりに肉声演説をしたのに続くものであった。党機関紙「労働新聞」がこの「新年の辞」に付けたタイトルは、「われわれの運命であり、未来であられる敬愛する金正恩同志を千万年高く奉じていきます」であった。

 「新年の辞」は昨年12月の張成沢(チャン・ソンテク)氏の粛清、処刑という「トラウマ」を抱えながら、自身による「唯一領導(指導)体系」を強化していこうという金正恩第1書記の決意表明だった。張成沢氏粛清のトラウマのせいか、体制の統制強化を優先させ、政策面では南北関係でやや融和的な姿勢を見せた以外は、新味に乏しい内容であった。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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