「粛清後」の北朝鮮(上)トラウマと農業改革

執筆者:平井久志 2014年2月12日
エリア: アジア

 北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)朝鮮労働党行政部長が「国家転覆(クーデター)陰謀」の罪で処刑されて約2カ月が経過した。党機関紙「労働新聞」など北朝鮮メディアには張成沢氏処刑以後は、これに直接関連する記事はほとんどなく、表面的には何事もなかったかのように事態は推移している。

 しかし、張成沢氏粛清以降、「労働新聞」に掲載される「社説」が激増した。2013年12月10日から2014年2月8日までに掲載された「社説」は実に26本に上る。「労働新聞」では「社説」は最も重要な記事で、住民に党や国家の方針を伝え学習の対象にもなる。日本の新聞のように毎日「社説」が掲載されるわけでなく、1週間に1度しか掲載されないことも珍しくない。しかし、張成沢氏が死亡して以降は2、3日に1回のペースで社説が発表されている。こんなに「社説」が数多く掲載されたことは最近ではあまり例がない。金正日(キム・ジョンイル)総書記が亡くなった時でもこんなに多くはなかった。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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