最後に米国で考えた東アジアのパワーバランス(上)

執筆者:白戸圭一 2014年4月9日
エリア: 北米 アジア

 これまで「アフリカの部屋」を中心にアフリカに関する記事を執筆してきたが、今回は米国ワシントンDCで考えた東アジアにおける日米中3カ国のパワーバランスについて書くことをお許し願いたい。3月31日付で新聞社を退職し、これまで特派員として担当してきた米国の外交に関する取材を終えたのに伴い、ワシントンでの取材で垣間見た日本が直面する安全保障上の危機について、書き残しておきたいと考えた次第である。

 

 日本が直面する安全保障上の大きな脅威の1つが、急速に軍備を拡張する中国の存在であることに異論のある人は少ないだろう。覇権主義的傾向を強める中国の軍事力は、強大化の一途を辿っている。国際社会の大勢は、アジア発の深刻かつ現実的な脅威は「日本軍国主義の復活」などではなく「中国の軍事大国化」だと考えている。仮に日本の首相が靖国神社に参拝せず、尖閣諸島の領有権を「棚上げ」したとしても、中国の軍事的膨張は止まらない。日本が右傾化しようが左傾化しようが、中国の軍拡は当面続くだろう。中国の軍拡は「日本」という要素とは関係なく進行しているからである。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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