野嶋剛さんの新著『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』

執筆者:フォーサイト編集部 2014年5月2日

「中国の部屋」運営者の野嶋剛さんが、このほど『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)を上梓されました。公開が始まった『蒋介石日記』などの資料や関係者への緻密な取材により、政治家・蒋介石の人間像と日本人軍事顧問団「白団」の活動の実態が浮かび上がります。

 

以下は、野嶋さんがご自身のブログで新著を紹介した文章です。

 

新著「 ラスト・バタリオン 蔣介石と日本軍人たち」が、4月末、講談社より出版されました。

おおよそどんな本かと言いますと、戦後、蔣介石に請われて台湾に渡り、およそ20年のあいだ、台湾の軍の幹部や若手将校に日本式の軍事教育を授けた日本軍人たちについて取り上げたノンフィクション作品です。

彼らは「白団」と呼ばれ、岡村寧次・元支那派遣軍総司令をリーダーに、総勢100人以上の日本軍人が参加したものですが、日本・台湾それぞれの事情で、長く公の目から秘匿されてきました。

朝日新聞の台北特派員時代の2007年にこの白団の重要性を蔣介石日記の記述などから知り、日本帰国後、資料の収集・整理を続けると同時に、生存中の白団関係者から聞き取りを続け、ようやく一冊の本としてまとめることができました。

 

蔣介石については、日本にも台湾にも詳しく研究されている多くの専門家がいるので、ある意味で、いろいろ批評や批判にさらされることは覚悟しながら、日本人が?介石について、イデオロギーや中国・台湾という対立軸から離れ、日本や世界に影響を与えた歴史的人物として理解を深めていって欲しいと思っています。

 

この作品は、白団そのものの活動内容を詳細に取り上げるということ以上に、白団にかかわった人間や組織を重層的に取り上げることで、戦後戦後の日中台の複雑な関係を描き出そうと考えて執筆したものです。

 

私はこの10年ほどでいくつかの本を発表してきましたが、短期的に取り組んだ作品と、長期的に取り組んだ作品の二種類に分かれるようです。

「イラク戦争従軍記」「謎の名画・清明上河図」「銀輪の巨人」などはいずれも前者で、本書は「ふたつの故宮博物院」に続く、長期的な取材を経て執筆した二作目の作品となります。

 

本書の完成は、直接的・間接的を問わず、私に白団や蔣介石のことを教えて下さった皆さんのお陰です。

ハードカバーのうえたくさん書いてしまったのと、消費税の値上げもあって2700円とちょっと値段が高くなってしまいましたが(笑)、もし機会があればご一読いただければ本当に嬉しい限りです。

 

 

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