「宿題」をしない米国――TPP の政治経済学

執筆者:武内宏樹 2014年7月11日
エリア: 北米

 交渉の停滞によるものなのであろうが、最近日本では環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership: TPP)をめぐる議論はやや下火のようである。この問題をめぐっては、日本ほどではないにしても、米国内でも賛成、反対双方から様々な主張が展開されてきた。

「経済連携協定」というと、自由貿易協定のようなイメージから、19世紀にリカードが提起した比較優位のモデルを引き合いにしながら、貿易の果実をどのように各国が享受できるようにするかということが焦点であるように考えられてきた。もちろん、多国間の貿易を促進して各国経済の成長に結びつけるという意味では、TPP を経済問題として論じるのはあながち間違いではないのであるが、筆者は、各国の国内政治事情を考慮に入れなければ、この問題の本質は何も見えてこないと考えている。そこで、TPP をめぐる米国の国内政治事情を考えてみたい。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
武内宏樹(たけうちひろき) サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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