中東―危機の震源を読む (22)

「痛み分け」のレバノン紛争 将来への希望と危惧と

[カイロ発]七月半ばから八月半ばにかけてイスラエルとヒズブッラー(ヒズボラ=シーア派軍事・政治組織)の間で行なわれたレバノンでの大規模な戦闘によって、レバノン政治と中東の地域秩序にはどのような変化がもたらされたのだろうか。停戦後の外交や内政の動向を含めて、まとめてみたい。バランスを取るシニョーラ政権 まず、この戦闘で勝者は誰だったのか。アラブ諸国の世論では「ヒズブッラーが勝った」ということになっている。アラブ民族主義者は五十年前の英雄故ナセル・エジプト大統領と並べてヒズブッラーの指導者ナスラッラーの写真を掲げた。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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