国際人のための日本古代史 (58)

「お水取り」に秘められた「早良親王」鎮魂の願い

執筆者:関裕二 2015年1月14日
タグ: 日本

 奈良に春を呼ぶ祭りにお水取りがある。正式には「修二会(しゅにえ)」と呼び、旧暦2月に、国家安泰と人々の幸福を祈願する。二月堂の舞台でくり広げられる「お松明(おたいまつ)」が有名だが、本当のクライマックスは、若狭(福井県)から送られた水(お香水)を二月堂の眼下にある閼伽井(あかい)で汲み上げ内陣に納める「お水取り」だ。天平勝宝4年(752)から今日に至るまで1度も絶えることなく続けられてきた、東大寺を代表する大切な法会(法要)である。純粋な仏教の教義では説明不可能な行法もあり、謎めいている。また、それぞれの行事がドラマチックで荘厳、芸術的だから、観る者を惹きつける。「水取りや氷(籠り)の僧の沓(くつ)の音」の芭蕉の句が、すべてを物語っている。修二会には、音楽性もあるのだ。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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