饗宴外交の舞台裏 (112)

日仏友好の象徴だった大相撲「大統領杯」のゆくえ

執筆者:西川恵 2007年5月号
エリア: ヨーロッパ

 大相撲春(大阪)場所の千秋楽の三月二十五日、優勝した大関白鵬に恒例の「フランス共和国大統領杯」が贈られた。土俵に上ったアラン・ナウム総領事は「優勝おめでとうございます」と日本語で賞状を読み上げ、杯を手渡した。本来はジルダ・ル・リデック大使が直々に手渡すが、大使は所用で大阪に来られず、総領事が代理で出た。 同じころ、東京のフランス大使館広報部の担当者は大忙しだった。パリのエリゼ宮(大統領官邸)に幕内の取組結果を、詳細な決まり手とともに報告しなければならないからだ。これは時を置かずしてシラク大統領に伝えられたはずである。

カテゴリ: カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top