日本経済新聞社による英『フィナンシャル・タイムズ(FT)』の買収は、日本のメディア界に衝撃を与えた。日経がFTという世界の新聞の頂点に立つブランドを手に入れたことへの羨望とともに、グローバル展開、デジタル化で差を広げられたと感じているからだ。
一方、海外では「日経にFTのマネジメントはできない」「日経支配のもとではジャーナリズムとしてのFTは終わった」という辛辣な見方が多い。内外のメディアの視野狭窄ぶりを感じざるを得ない。これを一般産業界の出来事としてみれば本質は簡単につかめるだろう。飽和化し、縮小する市場に身を置いた、先進的にみえて実は大胆な事業革新力のない老舗企業同士の見かけ倒しの“婚約”にすぎない。日経FT連合は他のメディアに先んじた部分はもちろんあるが、先進国メディアにとって未来への道を示すものではない。

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