昨年、ヒマラヤ山麓の小国ブータンを初めてたずねたとき、印象深い言葉をきいた。
ブータンでは若い人たちが、「老いる」ことをまったくおそれないというのである。
身のまわりに「いかにも幸せそうな老人がいくらでもいるから」というのが、その話をしてくれた在留邦人の男性の解釈なのだったが、胸にすとんと落ちるものがあった。なるほど、ブータンのお年寄りたちは、赤ん坊のガラガラにも似た「マニ車(ぐるま)」という仏具を始終ごろごろ回し、シワが深く刻まれた顔をよくほころばせていた。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン