【ブック・ハンティング】幸せに老いるヒント

執筆者:野村進 2015年10月7日
タグ: 日本
エリア: アジア
『 介護民俗学へようこそ!―「すまいるほーむ」の物語― 』 六車由実/著 新潮社

 昨年、ヒマラヤ山麓の小国ブータンを初めてたずねたとき、印象深い言葉をきいた。
 ブータンでは若い人たちが、「老いる」ことをまったくおそれないというのである。
 身のまわりに「いかにも幸せそうな老人がいくらでもいるから」というのが、その話をしてくれた在留邦人の男性の解釈なのだったが、胸にすとんと落ちるものがあった。なるほど、ブータンのお年寄りたちは、赤ん坊のガラガラにも似た「マニ車(ぐるま)」という仏具を始終ごろごろ回し、シワが深く刻まれた顔をよくほころばせていた。

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執筆者プロフィール
野村進(のむらすすむ) のむら・すすむ。ノンフィクション作家。1956年東京生れ。拓殖大学国際学部教授。在日コリアンの世界を描いた『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞受賞。『アジア新しい物語』でアジア太平洋賞受賞。ほかに日本の老舗企業を取材した『千年、働いてきました』や、認知症の世界をルポした『解放老人』など著書多数。
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