ブックハンティング・クラシックス (66)

ソルジェニーツィンを一刀両断した「猪木正道」の凄み(前編)

 猪木正道京都大学教授は1970年7月、防衛大学校長に任命された。この人事に驚かなかった世人は少ないだろう。初代の防大学校長(正確には保安大学校長)には当時の吉田茂首相の懇請を容れて、槇智雄慶応大学教授が就任したものの、世間ではまだ自衛隊アレルギーが強く、アカデミズムの世界に後継学校長人材を求めることは無理だと考えられていた。その証拠に2代目学校長に選ばれたのは、戦前に内務官僚として役人の道を歩んだ大森寛氏である。尤も氏は極めて有能な人物であり、後年、大森氏が防大を訪問し、当時の幹部と懇談した際、図書館長として同席した私はその能吏ぶりに強い印象を受けた。

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執筆者プロフィール
佐瀬昌盛(させまさもり) 防衛大学校名誉教授。1934年生れ。東京大学大学院修了。成蹊大学助教授、防衛大学校教授、拓殖大学海外事情研究所所長などを歴任。『NATO―21世紀からの世界戦略』(文春新書)、『集団的自衛権―論争のために』(PHP新書)など著書多数。
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