北朝鮮「エリート駐英公使」の亡命(上)「英空軍機」で独へ脱出

執筆者:平井久志 2016年8月24日
エリア: ヨーロッパ アジア

 韓国統一部の鄭俊熙(チョン・ジュンヒ)スポークスマンは8月17日、在ロンドン北朝鮮大使館のナンバー2であるテ・ヨンホ公使(55)が最近、妻子ら家族とともに韓国に亡命し、韓国政府の保護下にあると発表した。
 北朝鮮外交官の亡命としては1991年に在コンゴ大使館勤務だった高英煥(コ・ヨンファン)1等書記官(現・国家安保戦略研究院副院長)が韓国へ亡命したケースや、1997年に在エジプト大使館の張承吉(チャン・スンギル)大使が米国に亡命した事件がある。外交官の亡命としては張承吉大使と並ぶ最高位クラスで、金正恩(キム・ジョンウン)政権に大きな打撃になるとみられる。
 テ・ヨンホ公使は、金正恩党委員長の兄、金正哲(キム・ジョンチョル)氏が昨年5月にロンドンで行われたエリック・クラプトンの公演会場に姿を現した際に、サングラスを掛けた金正哲氏をエスコートして随行する姿が確認されている。テ公使がそれだけ北朝鮮当局に信頼されていたということだ。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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