風が時間を
風が時間を (13)

まことの弱法師(13)

執筆者:徳岡孝夫 2017年5月3日
タグ: 国連 アメリカ
エリア: 北米

 ニューヨークへ飛ぶユナイテッド機の中でペーパーバックの『マージョリ・モーニングスター』を読んでいた。当時のベストセラーで、もう忘れてしまったが、主人公の成長に伴うユダヤ家庭の様子が面白かった。そこへ機内食が出た。美味しいミートローフだった。

 ふと「そうだ。お母さんにニューヨークを見せよう」と思い付き、内ポケットから母の写真を出して『マージョリ』に挟み、前の席の背に入れた。

 後で知ったが、少なくとも西から来る旅客機は、マンハッタン摩天楼群の上空を通らないのである。

 次に気がついたとき、私は女性乗務員に肩を叩かれていた。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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