風が時間を
風が時間を (14)

まことの弱法師(14)

執筆者:徳岡孝夫 2017年5月27日
タグ: アメリカ 日本
エリア: 北米

 ニューヨークは魅力に富んだ町だが、私にはシラキュース大学の受講登録日がある。妻のお産のこともある。大阪を発つとき私は出産通知の電報の宛名をシラキュース大学院の寮にしておいた。一刻も早くおめでたを知りたい。ニューヨークにいては、電報の行く先が分らないのである。

 ニューヨーク見物をそこそこに切り上げ、私は毎日支局へ行った。

「日本料理でお別れをしようか」

 山内大介さんはそう言って私をアキへ連れて行った。

 当時のニューヨークに日本料理屋は2軒しかなかった。接待用の高価なサイトーとコロンビア大学に近いアキだけである。行って私は料理の名を忘れたが、とにかく日本食を食べた。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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