連載小説 Δ(デルタ)(38)

執筆者:杉山隆男 2018年1月6日
エリア: 北米 アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

秘密部隊デルタのリーダー・磯部のもとに、最年少の隊員が書置きを持ってくるが、磯部はそれを受け取らなかった。護衛艦「かが」でのあわただしい食事の後、2時間に亘る詳細なブリーフィング。本当の戦闘が間近に迫っていた。

 

     30

「なに寝ぼけたことを言ってるんだッ!」

 いつになくいらだった総理の声が執務室の空気を震わせた。その剣幕に気圧されて電話の向こうは束の間沈黙したが、やがてモニター越しに外相のゆったりとしたバリトンがすぐ眼の前で話しているかのような明瞭さで聞こえてきた。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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