饗宴外交の舞台裏 (240)

「儀礼と夕食会」では大成功だった「南北首脳会談」

執筆者:西川恵 2018年5月7日
エリア: アジア
グラスをわしづかみする文在寅大統領とスマートにもつ金正恩委員長。両夫人のファッションにも注目(C)AFP=時事

 

 首脳外交は内容と見かけの2つが重要だ。なぜ見かけも大切なのか。それは巧みなパフォーマンスは交渉の成功を印象付け、首脳らの指導力を見せつける効果があるからだ。板門店で行われた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領の南北首脳会談は、内容の面では目新しいものはなかったが、見かけの点では大成功だった。

 4月27日、首脳会談を終えた両首脳は、同日午後6時40分から「平和の家」で夕食会に臨んだ。両国合わせて約70人が出席。冒頭、文大統領が高揚感溢れる面持ちで「自由に行き来できるその日のために乾杯!」とシャンパングラスを挙げた。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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