「君主号」の世界史 (12)

「皇帝」号の定着と東西の翻訳概念

執筆者:岡本隆司 2018年9月1日
エリア: ヨーロッパ アジア
清朝代々の「皇帝」が過ごした北京・紫禁城(故宮)(C)EPA=時事

 

 イエズス会士たちが呼ぶ「タルタリー(ないしタタール)」とは、広義には万里の長城以北、漢語で「塞外」と呼ぶ空間を指して呼ぶ表現で、ル・コントもほぼその用法に従っている。そこに暮らす人々は、具体的にはモンゴル人・満洲人にひとしい。ここで「東タルタリー」というのは、東三省から現在の内蒙古・モンゴル国におよぶ範囲にあたる。ジュンガールなどトルキスタンにひろがる西方のモンゴルは、この時まだ清朝に帰服していなかった。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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