「君主号」の世界史 (18)

王から皇帝へ

執筆者:岡本隆司 2018年11月24日
エリア: ヨーロッパ
ヨーロッパを席巻したナポレオンは「皇帝」に就いたが――

 

 前後20年近くにおよぶナポレオンの興亡は、中世から近世にわたるヨーロッパ史の全過程をいわばくりかえした縮図だろうか。ハプスブルク家を中心とする対仏大同盟との対決は、さながらローマ皇帝争奪の継続にして再演だった。勝ち抜いたナポレオンは、名実ともに全欧を制覇し、「皇帝」の名にふさわしい版図を有する。ルイ14世でもできなかった偉業にまちがいはない。

フランスの場合

 ところがナポレオンは、その支配に反抗する動きをとどめることができなかった。その「帝国」は「諸国民」の戦いで瓦解して、多元的な国民国家の並立体制が、ウィーン会議で最終的に確立する。

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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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