対中「貿易戦争」だけではない「軍事力」攻防で米国の「焦り」(中)

執筆者:野口東秀 2018年11月29日
エリア: 北米 アジア

「珠海航空ショー」で初公開された中国の次世代ステルス戦闘機「殲20」(C)AFP=時事 

 

 米国側のこうした焦りは、米国の安全保障関連シンクタンク「ランド研究所」が2016年8月に公表した詳細な報告書「中国との戦争」(研究の予測範囲は2015~2025年まで)でも顕著だ。

 タイトル通り、米中間で戦争が起きた場合を想定しているのが特徴だ。そこでは「米中は、陸海空、宇宙、サイバーなどの広大な領域で戦闘を行うのに十分な兵力、技術、工業力を有している」とし、米中戦争が起こる要因として、「尖閣諸島など東シナ海での日中間の軍事対立」「領有権を争う南シナ海で中国が行う軍事的威嚇」「北朝鮮の政権崩壊に伴う米中軍事介入」「台湾有事」などが列挙されている。

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執筆者プロフィール
野口東秀(のぐちとうしゅう) 中国問題を研究する一般社団法人「新外交フォーラム」代表理事。初の外国人留学生の卒業者として中国人民大学国際政治学部卒業。天安門事件で産経新聞臨時支局の助手兼通訳を務めた後、同社に入社。盛岡支局、社会部を経て外信部。その間、ワシントン出向。北京で総局復活後、中国総局特派員(2004~2010年)として北京に勤務。外信部デスクを経て2012年9月退社。2014年7月「新外交フォーラム」設立し、現職。専門は現代中国。安全保障分野での法案作成にも関与し、「国家安全保障土地規制法案」「集団的自衛権見解」「領域警備法案」「国家安全保障基本法案」「集団安全保障見解」「海上保安庁法改正案」を主導して作成。拓殖大学客員教授、国家基本問題研究所客員研究員なども務める。著書に『中国 真の権力エリート 軍、諜報、治安機関』(新潮社)など。
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