灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(62)

執筆者:佐野美和 2019年7月28日
エリア: ヨーロッパ アジア
自著『雨だれのうた』(昭和22=1947=年刊より。撮影年不詳だが、義江と結婚できた幸せの頂にいたころ)

 夫も自分も今が正念場だ。夫が種を蒔いてきたオペラという木がようやく育ち始めるのだ。自分の父親の縁で大きな援助者が1人増えたというのはありがたく、あきは心の中で父にそっと手を合わせた。

 藤原歌劇団のパトロンとなってくれた三井高公男爵に続き、新たな救世主が現れる。銀座一丁目に「焼き物や」の店を構える「陶雅堂」の主人、日比野秀吉だ。

 無類のオペラ好きであり、店の2階の倉庫を練習場として解放してくれたのだ。自らちょっとした役でオペラに登場したり、時に脚本も手掛ける。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
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