灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(68)

執筆者:佐野美和 2019年9月8日
タグ: 日本
エリア: ヨーロッパ アジア
まだ戦争前、家族そろって洋行から帰国した頃(下関市「藤原義江記念館」提供、以下同)
 

「過去にこだわると老ける」

「人に愛されようとするといらだつ」

 のちのあきの生活の信条となる2つだが、今はまさにその苦しみの中にいる。

 義江との燃えるような不貞時代ばかりを思い出し、義江の心が他の女にあるのではないかという胸の奥底にあるくすぶった思いは、人一倍美容にこだわってきたあきを急激に老けさせていた。

 実際、この当時のあきの写真をみると別人のように感じてしまう。好奇心の旺盛さを感じさせる明眸は陰りをみせ、鼻にかかった甘い声が出てくる唇は、いつもの理路整然とした会話もないほどに硬く閉じられ寂しげな表情だ。

カテゴリ: 社会 カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top