灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(72)

執筆者:佐野美和 2019年10月6日
まだ戦争前、家族そろって洋行から帰国した頃(下関市「藤原義江記念館」提供、以下同)
 

 藤原歌劇研究所が建つ高台の赤坂氷川町は夜になると一層静けさを帯びる。

 並びの氷川神社はとっくに門が閉ざされ、周囲の道には裸の街灯が申し訳ない程度に灯る。

 研究所の裏手からは眼下に花街の小さな灯りが点々と広がる。

 氷川町から赤坂の街に出る坂の途中には、ぽつぽつと花柳界の女たちがそれぞれの旦那にあてがわれた小さな家があり、ときおり三味の音色が流れてくる。

 研究所の正面玄関前の道は下り坂、戦前「北三井邸」と呼ばれた三井財閥の所有だったが戦後すぐ占領され、のちにアメリカ大使館職員の住居となっている。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
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