灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(77)

執筆者:佐野美和 2019年11月10日
タグ: アメリカ 日本
エリア: 北米 アジア
まだ戦争前、家族そろって洋行から帰国した頃(下関市「藤原義江記念館」提供)
 

 離縁を決断しロサンゼルスから日本へと1人帰っていったあき。

 シカゴで最後の公演を終えパリへと戻った砂原美智子。

 残りの劇団員達とシカゴにいる義江は、今まで感じたことのない寂しさに襲われた。

 義江は手紙を書く。

「何度も書いては破った。落ち着いたら納得のいくまで書く。愛は絶対だ、永久だ」

 宛先は、東京の豪邸に1人で暮らす三上孝子だ。

 三上は大正時代に少女歌手としてデビューし、義江のタニマチをする父の勧めで旗揚げしたばかりの藤原歌劇団に入った。入団して数年、『シューベルトの恋』を演ずるうちに2人は男女の仲になった。昭和の初めから続く2人の仲は戦争中もそのままに、多くの慰問公演にも同行した。

カテゴリ: カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top