
撮影年不詳ながら、義江との離婚、独り立ちを決意した頃のあき(自伝『ひとり生きる』(ダヴィッド社、1956年より)
月曜日の夜7時半。7時のニュースのあとに『私の秘密』が始まる。
この頃からの最新技術で、舞台を写す画面の途中に、ホールの観客の画が時折差し込まれる。和服の年輩婦人が圧倒的に多い。
大きく開いた口からは金属の不恰好な歯が飛びだし、浅黒い肌の頰には笑うとさらに深くなるシワがきざまれている。
実に幸せな笑顔であるが、出演者の藤原あきと比べるとその肌の質感は歴然としていた。あきは還暦を過ぎていて、観客の婦人たちもわざわざホールにやって来るくらいであるから、あきとそう年齢は離れていないであろう。やはりあきは驚異的に若い。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン