「平和構築」最前線を考える
「平和構築」最前線を考える (35)

増加に転じた貧困層と立ちすくむポスト「対テロ戦争」の開発援助

紛争の頻発は、食糧などの人道支援を滞らせてしまう危険性を孕む (C)AFP=時事
増加し続けていた世界の開発援助は、大国の疲弊に新型コロナの追い打ちでブレーキがかかる傾向に。一方、世界各地での紛争の頻発は、増え始めた貧困層への人道支援を停滞させる。

 2021年も継続した新型コロナ危機の中では、アメリカのアフガニスタン完全撤退に象徴されるように、疲弊度を高めた国家の政府が軍事行動を抑制しようとした傾向もあった。その一方で、エチオピアのティグレ州をめぐる紛争のように、連邦政府の統治の脆弱化に伴って始まった大規模紛争もあった。2021年に各地で頻発したクーデターも、中央政府の統治の脆弱化と連動していると言うこともできるだろう。

武力紛争の増加と国際平和活動の低下

図1:過去10年間の武力衝突事件数の推移
図2:過去10年間の武力衝突事件に伴う犠牲者数の推移 (出典:図1・図2ともにThe Armed Conflict Location & Event Data Project

 図1・図2を見てもわかるように、武力紛争発生件数でも犠牲者数でも、2010年代の後半の数値が非常に高い。あえて言えば、2018年頃の水準と比べて2021年がより高かったわけではないが、2010年代前半までの時期と比べれば、依然として極めて高い水準にある。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
篠田英朗 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
フォーサイトのお申し込み
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top