なぜカザフスタン騒乱は「民主化のはじまり」ではないのか?

執筆者:東島雅昌 2022年2月22日
エリア: アジア
2月13日、抗議行動の犠牲者を追悼する集会が行われた(C)AFP=時事
中央アジアのカザフスタンで起きた騒乱は、液化石油ガスの値上げという経済的要因と、ナザルバエフ院政への不満という政治的要因が結びつき大規模・急進化した。独立後、安定した権威主義体制を築いてきた同国に起きた異変。しかし、これを以て「民主化のはじまり」とするのは早計だという。

 

 2022年の年明けからカザフスタンで急速に大規模化し、全国へと拡がった抗議運動は、大きな注目を浴びることとなった。

 カザフスタンは、ユーラシア大陸の中央部に位置する、中国とロシアを隣国にもつ多民族国家である。1991年12月の国家としての独立とソヴィエト連邦の崩壊以来、豊富な石油資源による堅実な経済成長、そして「国父」として 約30年権勢を奮ってきたヌルスルタン・ナザルバエフの強力なリーダーシップのもとで、安定した権威主義体制を築いてきた。

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執筆者プロフィール
東島雅昌(ひがしじままさあき) 東北大学大学院情報科学研究科 准教授。専門は、比較政治経済学、政治体制変動、権威主義体制、中央アジア政治。1982年、沖縄生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、ミシガン州立大学PhD (Political Science)。早稲田大学高等研究所助教を経て現職。その間、カザフスタン共和国KIMEP大学客員研究員、欧州大学院大学マックス・ウェーバー博士研究員、ミシガン大学政治研究センター客員研究員などを兼職。著書にThe Dictator's Dilemma at the Ballot Box(University of Michigan Press/2022年6月)がある。
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