医療崩壊 (60)

「ロシアより悪い」詭弁と冒涜で国産ワクチン開発を弄ぶ厚労省

執筆者:上昌広 2022年3月2日
日本の追加接種終了率はG7で最下位が続く(ワクチン追加接種を受ける政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長)   (C)時事
国民へのコロナ対策そっちのけでウクライナ侵攻を始めたロシア。その政府の姿勢を良しとは決してないが、国産ワクチン開発で第3相臨床試験を軽視する日本の甘さは、ある意味ではロシアより悪い。効果のはっきりしない国産に躍るより、米国メガファーマに素早く強く働きかけるべきではないのか。

 ロシア軍によるウクライナ侵攻が世界の関心を集めている。この軍事行動が世界に与える影響は専門家の議論に譲るとして、私が興味をもっているのは、新型コロナウイルス(以下、コロナ)オミクロン株への対応だ。本稿で論じたい。

 実は、ロシア、ウクライナの流行状況は、現在の我が国と酷似する(図1)。

図1

 例えば、ロシアの感染者は2月15日にピークをうち、漸く下がり始めたところだ。そこで、隣国に戦争を仕掛けたことになる。

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執筆者プロフィール
上昌広(かみまさひろ) 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。
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