中国「高度成長の終焉」でも米欧「対中投資」が止まらぬ理由

執筆者:瀬口清之 2022年12月20日
エリア: アジア
欧米間でも中国市場を奪い合う構図は続いている[上海で開催された第5回中国国際輸入博覧会(CIIE)=2022年11月6日](C)AFP=時事
高度成長の終焉は予測から3〜4年早く訪れたが、欧米の対中投資は衰える気配を見せていない。米中対立の構図が固定化され、経済安全保障が重要課題となる中で、一流グローバル企業はどのような判断を下しているか。そこには米国勢と欧州勢のシビアな競争関係と、それでも中国に生き残りをかけねばならない日本企業の究極の選択肢が浮かび上がる。

1.米中対立は変わらない

   2022年は米中関係が一段と悪化した。その主な要因は3つ。第1は中国とロシアとの接近、第2は台湾をめぐる対立、第3はゼロコロナ政策である。これらの問題に関する中国の姿勢や政策方針に対して米国内での​批判が強まった。また、中国も米国に対する強硬姿勢を崩さなかった。

   背景には、両国の内政事情が影響していた。中国では10月後半に第20回党大会が開かれ、米国では11月上旬にバイデン政権の評価が示される中間選挙が行われた。これらの重要な政治日程を控え、国民に対して対外的な弱腰姿勢を見せられないことが両国外交政策運営の制約となった。すなわち、両国とも内向き志向の外交が対外強硬路線を招いた。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
瀬口清之(せぐちきよゆき) キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹。1982年4月日本銀行入行。91年4月在中国日本国大使館経済部書記官。04年9月米国ランド研究所にてInternational Visiting Fellow。06年3月日本銀行北京事務所長。09年3月日本銀行退職、同年4月現職、杉並師範館塾長補佐(11年3月閉塾)。10年11月アジアブリッジ(株)<主に日本企業の中国ビジネス支援>を設立。16年4月~17年6月国連UNOPS中国・アジア太平洋食品安全プロジェクト・シニアアドバイザー、19年10月日本アジア共同体文化協力機構理事。著書に『日本人が中国を嫌いになれないこれだけの理由』(日経BP社 2014年)ほか。メディア関連では、BS朝日「激論!クロスファイア」、BSフジ「プライムニュース」、BS11「報道ライブ インサイドOUT」、BSテレビ東京「日経プラス9」等への出演、日経BP、JBプレス等での寄稿。日米中各国の大学・シンクタンク、日本の中央省庁、企業・経済団体等での講演は年間数十回。
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