
2022年初夏、江島元総理と5年ぶりに再会した財務省の周防は、日本人が自分で生きる自覚と増税の必要性を訴えた。その時、梶野元総理事故死のニュースが流れる。
Episode1 防人の覚悟
“守らば則ち余り有りて、攻めれば則ち足らず”
孫子
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2022年1月7日午前7時半、コロナ禍を配慮したテレビ会議形式で、日米安全保障協議委員会が行われた。
通称「日米“2+2”」と呼ばれる同協議委員会は、日米安全保障のトップ会談とされ、日本側は外務大臣と防衛大臣、米国からは国務長官と国防長官が出席する。
この日は、「日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた取組を速やかに具体化していくことで」一致し、引き続き、両国の防衛責任者による秘密会議が開かれた。
「2+2」から傍聴していた防衛省大臣官房会計課長補佐の磯部征治[いそべまさはる]は、秘密会議の意図がよく分からなかった。
昨夜遅くに米国側から一方的に、約30分、防衛関係者のみの秘密ミーティングを行うと言われたものの、内容について問い合わせると「より具体的な対中対策」としか回答されない。
“今、我が国大統領が、貴国の総理と電話会談で、お伝えしていることを話します。台湾有事に備え、我が国は中国に対しての防衛に専念することを決めました。ついては、日本は自国の防衛については、自ら守る覚悟で臨んで戴きたい”
米国国防長官の言葉に、磯部は我が耳を疑った。そんな情報も初めて聞く。
けっして英語が得意ではない舩井惣一郎[ふないそういちろう]防衛大臣は、同時通訳を聞くなり、顔を引きつらせている。……

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