オペレーションF[フォース] (3)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第3回

執筆者:真山仁 2023年3月11日
タグ: 日本
エリア: その他
(C)時事/外務省提供 (写真はイメージです)

2022年初夏、江島元総理と5年ぶりに再会した財務省の周防は、日本人が自分で生きる自覚と増税の必要性を訴えた。その時、梶野元総理事故死のニュースが流れる。

 

Episode1 防人の覚悟

“守らば則ち余り有りて、攻めれば則ち足らず”

                           孫子

 

1

 2022年1月7日午前7時半、コロナ禍を配慮したテレビ会議形式で、日米安全保障協議委員会が行われた。

 通称「日米“2+2”」と呼ばれる同協議委員会は、日米安全保障のトップ会談とされ、日本側は外務大臣と防衛大臣、米国からは国務長官と国防長官が出席する。

 この日は、「日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた取組を速やかに具体化していくことで」一致し、引き続き、両国の防衛責任者による秘密会議が開かれた。

「2+2」から傍聴していた防衛省大臣官房会計課長補佐の磯部征治[いそべまさはる]は、秘密会議の意図がよく分からなかった。

 昨夜遅くに米国側から一方的に、約30分、防衛関係者のみの秘密ミーティングを行うと言われたものの、内容について問い合わせると「より具体的な対中対策」としか回答されない。

“今、我が国大統領が、貴国の総理と電話会談で、お伝えしていることを話します。台湾有事に備え、我が国は中国に対しての防衛に専念することを決めました。ついては、日本は自国の防衛については、自ら守る覚悟で臨んで戴きたい”

 米国国防長官の言葉に、磯部は我が耳を疑った。そんな情報も初めて聞く。

 けっして英語が得意ではない舩井惣一郎[ふないそういちろう]防衛大臣は、同時通訳を聞くなり、顔を引きつらせている。……

国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!
カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 1962(昭和37)年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004(平成16)年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。同作をはじめとした「ハゲタカ」シリーズはテレビドラマとしてたびたび映像化され、大きな話題を呼んだ。他の作品に『プライド』『黙示』『オペレーションZ』『それでも、陽は昇る』『プリンス』『タイムズ 「未来の分岐点」をどう生きるか』『レインメーカー』『墜落』『タングル 』など多数。
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