
[シカゴ発(ロイター)]野鳥間で感染力の強い鳥インフルエンザの新株が世界各地で爆発的に広がり、哺乳類も感染して死に至っていることから、新型コロナウイルスよりも致死率の高いパンデミックが起こるのではないかとの懸念が生じている。
しかし、ロイター通信が感染症の第一人者たちに取材したところ、野鳥に感染して効率よく増殖することを可能にした変異こそが、ヒト細胞での増殖を困難にしていると言う。これは「現在のH5N1集団感染がヒトに危険を及ぼすリスクは低い」とする世界の保健当局の見解と一致している。
一息ついても大丈夫
新株は「H5N1 クレード 2.3.4.4b」と呼ばれ、2020年に出現してからアフリカ、アジア、ヨーロッパの大部分や北米と南米の一部に広がり、前例のないほど多くの野鳥や家禽が死に至っている。このウイルスは、キツネ、ハイイログマ、アシカ、アザラシといった哺乳類でも感染が確認されている。感染した鳥を捕食したことが原因だと考えられる。
ただ、このH5N1 亜型はヒトにおいて重大な感染を引き起こしてはいない。今のところ世界保健機関(WHO)には、感染した鳥と濃厚接触した人物から数件の感染例が報告されているのみで、ほとんどの場合、症状は軽症だった。
米国疾病予防管理センター(CDC)のインフルエンザ担当課で医務部長を努めるティモシー・ウイェキ氏は、インタビューで「一般社会へのリスクは低いと判断しています」とコメントした。WHOも2月に同様の見解を発表した。
専門家によれば、その理由の1つは、ウイルスが細胞の中に入り込んで感染する仕組みにある。……

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