その頭痛、もしかして「気圧」のせいかも?

執筆者:フォーサイト編集部 2023年3月30日
カテゴリ: 医療・サイエンス
たびたび頭痛に悩まされている人は、頭痛の起こった日とその日の天候の関係に注目してみるとよいかもしれない(写真はイメージです)

 普段、私たちはおよそ15トンの気圧がかかった状態で生活している。

 その気圧の変化が、さまざまな不調の要因の一つだと最近の研究では考えられており、中でも「頭痛」を引き起こすことはよく指摘される。あなたのその頭痛も、実は「気圧」と深い関係があるかもしれない。 

 「頭痛ーる」は、そんな悩みを抱える人のために、気圧の変化による体調不良が起こりそうな時間帯の確認や、痛み・服薬記録ができる、気象予報士が開発したアプリで、月間100万人もの利用者がいる。『頭痛ーるが贈る しんどい低気圧とのつきあいかた』から、気圧と頭痛の関係、そしてオフィスでもできる頭痛対策ストレッチを紹介する。

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 「鋭いキリで刺されているような感じ」

 「目玉や脳みそが飛び出そう」

 「頭に重い石を載せられている感覚」

 「大きな鐘の中にいるみたい」……。

 これらは気圧予報に基づく体調管理アプリ・頭痛ーるのユーザーアンケートで寄せられた、気圧の変化で現れる頭痛の症状です。

 気圧の変化で頭が痛くなる人は多いものの、その症状や程度は人それぞれ。原因や症状によって、医学的にはいくつかのタイプに分類されています。タイプによって痛みを和らげる方法が違ってくるので、気圧の変化で、どのような頭痛が起きやすいか、まずは知ることが大切です。

気圧は「空気の圧力」

 そもそも気圧とは何なのでしょうか。

 目に見えないので分かりにくいのですが、空気にも重さがあります。

 地球上にある空気(大気)の重さによってかかる圧力のことを気圧と言います。空気によって押される力が大きいときは「気圧が高い」、逆に小さいときは「気圧が低い」と表現しています。

 「低気圧」とは、その名の通り、周囲より気圧が低いところを指します。低気圧の中では風が中心に吹き込み、上空に向かって上昇気流が発生。地表付近の暖かい空気が吸い上げられると、上空で冷やされて水や氷の粒となって雲を作ります。

 その雲が発達して水や氷の粒がくっつきあい、空に浮かんでいられないほど大きくなると雨や雪となって地上へ落ちてくるのです。

 特に低気圧が定期的に発生する春と秋は寒暖差もあり、体に不調が出やすい時期です。

 一方、晴れた日でも気圧が下がるタイミングはあります。太陽の日差しで地表付近の空気が暖められると上昇気流が発生します。上昇気流ができると地表付近の空気量が一時的に減少し、気圧が下がります。

締めつけられるような痛みがある時は

 頭痛に大きく分けて「緊張型頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」の3つがある。

・頭部の両側に圧迫感がある

・頭部全体に重苦しい痛みがある

・歩行や階段の上り下りなど、日常的な動作をしても悪化しない

 こうした症状がある場合は「緊張型頭痛」かもしれません。「頭が輪っかで締めつけられているように感じる」と表現する人も多いです。一方で、吐き気や嘔吐を伴うケースは少ないと言われています。

 緊張型頭痛の原因は、デスクワークや運転など、長時間同じ姿勢を継続したことによる血流の悪化や、ストレスによる緊張感だと考えられています。

 慶應義塾大学医学部神経内科非常勤講師で医学博士の舟久保恵美先生1は長年、気圧の変化などによる不調について研究をしており、いわゆる〝低気圧頭痛〞を専門とする産業保健師としても知られています。

 舟久保先生は「気圧の変化で心身がストレスを受け、緊張型頭痛の症状が強く出る人もいるのではないでしょうか」と分析します。

20~30分に一度のストレッチが効果的

 緊張型頭痛を予防するには、長時間同じ姿勢にならないよう意識し、定期的に体を動かすのが一番のポイント。デスクワークが長時間に及ぶ場合は、仕事の途中でも首や肩を動かすストレッチを取り入れるのがおすすめです。

 はり師・きゅう師の森田遼介さん2が教えてくれたストレッチは、やり方も簡単です。図版を参考に試してみてください。同じ姿勢での作業が続くようなときは、20〜30分に一度はストレッチ。ぜひ習慣化してみましょう。

(デザイン:装幀新井)

ズキズキと脈打つような痛みがある時

・頭部の右側か左側、いずれか片方がズキズキと、脈を打つように痛む

 これが片頭痛の特徴です。

 ただ、中には両側が痛む人や、不規則に痛みを感じる人もいます。また、頭痛とともに吐き気や嘔吐を併発するケースが目立つのが緊張型頭痛との違いです。

 片頭痛は脳の血管が何らかの原因で広がり、炎症を起こすことによって痛みが発生します。

 日本頭痛学会によると、前兆として「キラキラした光、ギザギザの光が視界にあらわれ見えづらくなる(閃輝暗点)といった視覚性の症状」がある人が多いといいます。

 頭痛ーるのユーザーアンケートでも、気圧の変化による症状で「閃輝暗点」を挙げる人がいました。日本頭痛学会では「チクチク感や感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状」なども前兆としてあり、通常は前兆が5〜60分続いたあとに頭痛が始まるケースが多い、としています。

 片頭痛が起きる際、光や音、匂いに敏感に反応したり、不快に感じたりするケースもあります。

 「頭痛、激しい吐き気で薬を飲んでも効かない。音や光に耐えられなくなり、暗い静かな部屋で痛みに耐えるしかない」

 「目の前がチカチカする、音がうるさく感じる、光がまぶしくなる」

 「匂い、音に敏感になる。できれば無臭、無音のところで静かにしていたい」

 「片頭痛の痛みは鼻の奥〜額の左上が、ズキンズキンと脈打つようで、ひどいときは光・音・匂いを全て遮断したい」といった声が頭痛ーるのユーザーアンケートにも寄せられていました。

 片頭痛は脳の血管が拡張するために痛みが起きています。そのため、マッサージをしたり温めたりして血行を良くしてしまうと、かえって痛みが強くなってしまいます。ポイントは頭痛のないときに、首・肩周りを動かして、日頃から、首・肩こりを予防して頭痛にアプローチすることです。

目の周囲や側頭部が痛い

・目の周囲から前頭部、側頭部にかけての強い痛みが、数週間から数ヶ月、持続する

・夜間や睡眠中に、発作的に起こりやすい

・目の充血や涙、鼻詰まりや鼻水、前頭部や顔面の発汗などの症状を伴うことが多い

 こうした場合は「群発頭痛」が疑われます。日本頭痛学会でも「眼周囲〜前頭部、側頭部にかけての激しい頭痛が数週間から数ヶ月の期間群発することが特徴」とされています。

 また落ち着きがなくなったり、興奮したりするのも、ほかの頭痛とは違う点とされています。

 頭痛ーるのユーザーアンケートでも「目をやりで刺されるようなひどい目の奥の痛み」「目玉がえぐられるように痛くなり、夜寝ていても頭痛が分かる」

 「目の奥がズキズキすることにより、表情も笑顔を作る余裕がない」といった声がありました。他の頭痛と同様、気圧の変化で、より強く痛みが生じている可能性があります。

 群発頭痛で注意しなければいけないのは、通常の鎮痛薬は効かないという点です。群発頭痛の発作が起きている人には注射や酸素吸入などの治療が効果的とされているため、できるだけ早く病院を受診し、適切な治療とアドバイスを得たいものです。

 群発頭痛を予防する薬を処方してもらえる場合もあるので、まずはお医者さんに相談してみましょう。

 

【取材・監修協力者】

1.舟久保恵美(気象病研究者、医学博士)

慶應義塾大学医学部神経内科非常勤講師。内田洋行健康保険組合保健師。日本で唯一、低気圧頭痛を専門にする産業保健師。

2.森田遼介(はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、TC鍼灸マッサージ院院長)

埼玉県を中心に往診治療を行う。自律神経の調整を得意とし、根本治療に特化した施術で人気。 脳梗塞リハビリセンターでは鍼灸も活用したボティケアを提案している。NHK「あさイチ」などのメディアにも出演。

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