未来が見えないウーブン・バイ・トヨタ、頼みの綱は隈部新社長の出身母体「デンソー」

PERSONALS【人事情報】

2023年9月13日
エリア: アジア その他
2020年1月6日、ネバダ州ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)でウーブン・シティ構想などについて語った豊田章男氏 (C)AFP=時事
車載OS「アリーン」の開発、実験都市「ウーブン・シティ」などを手掛けるウーブン・バイ・トヨタは、豊田章男会長の御曹司である大輔氏も幹部を務めるトヨタの未来の開拓者だ。だが、その未来が一向に見えない。期待の新技術の難航と止まらない財務悪化の中、デンソー出身の隈部新社長就任は起死回生の一手となるか。

 

 トヨタ自動車が発表した先端技術の開発を担う子会社の役員人事が波紋を広げている。

 今後の自動車技術の中核となるソフトウェアなどの開発を手がける子会社ウーブン・バイ・トヨタをリードしてきたジェームス・カフナー社長(52)が、10月1日付で退任すると発表された。後任にはグループではあるものの、社外のデンソー出身の隈部肇(くまべ・はじめ=59)氏が就任する。さらに、トヨタの常務役員在任中、麻薬の密輸容疑で逮捕されたジュリー・ハンプ氏(63)がウーブン・バイ・トヨタの社外取締役に就くことも決まった。トヨタの先端技術開発に何が起こっているのか。

自力ではIT人材を確保できず

 トヨタは自動車メーカーからモビリティカンパニーへとフルモデルチェンジすることを掲げており、これを実現するための中核を担っているのがウーブン・バイ・トヨタだ。車両のソフトウェアOS(基本ソフト)、プラットフォーム、自動運転・先進運転支援システムの開発や、静岡県裾野市の東富士工場跡地に建設中の実験都市「ウーブン・シティ」などを手がけている。豊田章男会長(67)の長男である豊田大輔氏(35)がシニア・バイス・プレジデントを務めていることを見ても、トヨタにとってウーブン・バイ・トヨタが未来の開拓者であることは明らかだ。

 今後の自動車は、デジタル技術や通信技術の進化に伴い、スマートフォンのように、ソフトウェアによって機能が決まるソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)に移行するとされており、自動車メーカー大手が開発を急いでいる。このSDVを実現するための基盤となるのが車載OSで、トヨタでは「アリーン」と呼ぶ独自OSをウーブン・バイ・トヨタが開発してきた。

 しかし、トヨタは元来ソフトウェア開発が得意ではないだけに、アリーンの開発は難航しているという。ITに強い人材は取り合いになっており、思うように確保できていない。このままでは計画通りSDVに対応するモデルを投入できない可能性がある。

 そこでトヨタが頼ったのがグループで半導体やソフトウェアに強いデンソーだ。ウーブン・バイ・トヨタの事業を主導してきたカフナー氏を退任させ、デンソー出身で、現在、車載制御ソフトウェアを開発するためデンソーやアイシンなどが出資して設立したJクワッドダイナミクスの社長を務める隈部氏をトップに据えることにした。

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