「ビンラディンの手紙」が拡げた波紋
Foresight World Watcher's 4Tips

今週もお疲れ様でした。日本ではあまり話題になりませんでしたが、9.11米同時多発テロの首謀者であるウサマ・ビンラディンが21年前に発したメッセージ「アメリカへの手紙(Letter to the American People)」が、SNSで爆発的に拡散されるという出来事がありました。イスラエル・ハマス大規模衝突をきっかけに、米国の若年層の間で自国の中東政策に対する不信感が高まっていることが背景だと、中国・外交学院国際関係研究所の李海東教授は指摘します。
詳細は後述します。それとは別にひとつ思わずにいられないのが、いわゆるZ世代にとって2001年はすでにリアルな手触りのない遠い過去になりつつあるのだということです。経済には「バブルを知らない市場参加者がバブルを作る」というような言葉があります。いまウサマ・ビンラディンの亡霊が姿を現すのは、おそらく「対テロ戦争」以降の国際政治の未解決な部分を映しており、世代論に還元して済む話ではないはずながら、この世論の危うい振幅は見逃せない問題だと感じます。
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本・拉登的信在美引关注,说明什么?【环球时报/李海东/11月23日付】
イスラエルとハマスとの間での戦闘の一時休止が、現地時間の11月24日の朝、実現した。同じ日の午後には人質50人の解放と受刑者150人の釈放(すべて女性と子供となる)も始まる。戦闘休止などの当初の予定は1日前の23日からだったことも考えあわせると、その日から始まる米国の感謝祭休暇が強く意識された日程だったように感じられる。
七面鳥のローストを家族で囲み、ブラック・フライデーのセールに熱中し、クリスマス、そして年明けまで続く長いホリデーシーズンのスタートを祝うことになっているこの時期に、凄惨な戦いが続いている――そんなことになっていれば、米ジョー・バイデン政権は失点をさらに重ねていただろう。
米国内では、ハマスへの“報復”は過剰であり、その抑制にバイデン政権は消極的だとの見方が、イスラエル支持と拮抗するように拡がっており、イスラエル・ハマス“戦争”は米国の分断の新たな要因となりつつある。しかも、大統領選の投票日まで残り1年を切るという時期においてだ。
あのウサマ・ビンラディンが同時多発テロ事件の1年後に発表した「米国への手紙」が、それから21年後の今月中旬、米国の若年層を中心にSNSで注目を集めた。「手紙」には、米国が9.11で攻撃対象となったのはイスラエルを支持しているからだとのビンラディンの主張が盛り込まれている。
「最初の驚きに続き、多くの米国のメディアやウェブサイトは相次いでこの現象の発生を分析し、考察した。『若い世代のモラルの指針は完全に崩壊してしまったようだ』との主張も出れば、政治家を中心にソーシャルメディアに槍玉を挙げる向きも出たし、反米的な問題提起について米国の学界や大学教育システムの関与を調査し、是正するよう求める向きもいた。筆者の考えでは、ビンラディンの手紙が今、米国の若者の間で注目されるようになっている背景には、社会心理学的な動機に加え、政治的な動機もある」
このように分析する「筆者」とは、中国・外交学院国際関係研究所の教授、李海東だ。同「環球時報」サイトのオピニオン(評論)欄に11月23日付で掲載された「ビンラディンの手紙に米国が注目、その意味は?」で、3つの要因を挙げて「手紙」現象を分析している。……

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