今週もお疲れ様でした。日銀の金融政策正常化に向けて、市場の動きが慌ただしくなってきました。7日（木曜）からの急速な円高は、当日午前からの参議院財政金融委員会で植田日銀総裁が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したこと、および前日6日に氷見野副総裁が金利上昇のメリットに言及したことが背景にあります。つまり、正常化が前倒しで行われるのではないかとの観測が広がったわけですが、海外メディアではこれに慎重な見方を示す記事が多いようです。
ただ、金融政策の行方については植田総裁とともに内田副総裁の発言が注目されることが多い（下記、関連記事をご参照ください）のですが、元金融庁長官で金融システムや国際金融規制に詳しい、いわば「現場担当」の氷見野氏からの発信が始まった（発言のあった大分県金融経済懇談会での講演は副総裁として初めての講演だそうです）ことはやはり注目に値します。次回の日銀金融政策決定会合は12月18、19日、サプライズはあるのでしょうか。
それではフォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。
Yen leaps to 3-month high as traders bet on Bank of Japan rate increase【Leo Lewis、Stephanie Stacey／Financial Times／12月7日付】
The Yen of a Bad Era【Editorial Board／Wall Street Journal／12月7日】
Will a fiscal mess thwart Japan's nascent economic growth?【Economist／12月7日付】
Japanese economy contracts faster than thought amid speculation over BoJ pivot【Kana Inagaki／Financial Times／12月8日付】
「日銀の植田和男総裁の発言により、日本の超金融緩和政策が終了に近づいているとの思惑が市場に広がり、木曜日［12月7日］、円は対ドルで3カ月ぶりの高値に跳ね上がった」「植田は木曜日、岸田文雄首相と［午後に］会談。［午前中に］国会では金融政策の運営が『年末から来年にかけ一段とチャレンジングになる』と述べた」
「植田発言より前の木曜の取引開始直後から、円は対ドルで上昇傾向にあった。これより前［前日の6日］、日銀の氷見野良三副総裁が、利上げによるダメージの可能性を軽視する発言を行っていたことを受けたもの」
英「フィナンシャル・タイムズ（FT）」紙は12月7日付「円相場、3カ月ぶりの高値に急伸 トレーダーらは日銀の利上げに賭ける」で、このように報じた（筆者は在東京アジア・ビジネス・エディターのレオ・ルイスと在ロンドン市場担当トレイニーのステファニー・ステイシー）。
もっとも、日本の金融政策が今すぐ急に大きく転換するとの見通しは示していない。
「一部のアナリストは、植田氏と氷見野副総裁の発言は、来年の日本の金融政策の緩やかな『正常化』に向けて世界市場に備えるためのものだと述べた」「それでも一部のアナリストは、早ければ12月か1月にも利上げといった期待は時期尚早かもしれないと警告している」
米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙も12月7日付の社説「悪い時代の円」で、「日銀の高官らは今週、日本の長いマイナス金利時代の終わりが近いことを示唆した」としつつ、その終わりの時期や手段については幅を持たせている。
「日本の金利と円相場の正常化は長きにわたる懸案だった。［中略］だが、正常化がすんなり進むと期待してはならない」「植田・氷見野両氏は、正常化は大きな混乱なしに達成できると主張しており、それ以外のことは言えないだろう。彼らが正しい可能性もある」「しかし、近年の異常な金融政策からの脱却は、この政策が導入されたときと同様に大きな実験となる。［今回の］円相場の2.5％の変動は、実験の始まりにすぎないかもしれない」
社説は、「ひとつの問題」として、日本の投資家が低コストで調達した円で海外に投資する円キャリートレードが莫大な額になっていることだ。「大きな未知数は、日銀が金利をプラスに戻し、こうしたマネーの流れが一部反転し始めたとき、日本およびそれ以外の世界の経済に何が起きるかだ」との疑問を打ち出す。
また、英「エコノミスト」誌は、東京発12月7日付の「芽吹き始めた日本の経済成長を妨げるのは財政の混乱？」で別の懸念を示している。……
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