オペレーションF[フォース] (43)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第43回

執筆者:真山仁 2023年12月16日
タグ: 日本
エリア: アフリカ
(C)EPA=時事[写真はイメージです]
国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】台湾の潜水艦は返還する、条件は日中安全保障条約締結への協力――。華首相の提案は罠か好機か。元外務省の野添の反対を押し切って、都倉は提案を呑む決断をする。

 

Episode5 四面楚歌

 

8

 華と一緒に記者会見を開くと決定してから、長時間待機させられた。

 国家主席ら政治局常任委員への報告、軍への対応要請と順調に進んでいると、順次、王課長から報告があったが、それでも会見に至るまでには、長い道のりがあったようだ。

 都倉としては、記者発表の前に、大迫総理と繁森外相に連絡しておきたかった。

 当初は、「それは、できない相談だな」と華は却下したのだが、都倉を日本政府代表として記者会見に臨ませたいなら、それは必須と説き伏せた。

 だが、そのゴーサインがまだ出ないのだ。

 明け方近くになって、ようやく王課長が「会見は、早くても明朝になるので、暫く仮眠をお取り願いたい」と言ってきた。

 到底、眠れる心境ではなかったが、それでも、会見で失言するわけにはいかず、都倉は、用意された部屋で、横になった。

 照明を全て消して横になっても、頭は眠る気配もなく、逆に様々な考えや感情が渦巻いた。

 これから自分は何度となく、この日のことを思い出すのだろう。それは、痛恨の記憶としてだろうか、あるいは晴れがましい想い出としてだろうか。

 いずれにしても、自分の決断に悔いはない。

 こういう決断をするために、国会議員になったのだ。この決断の是非は、私が決めることではない。

 午前7時にベッドサイドの固定電話が鳴った。野添だった。

 “おはようございます。今、王課長から連絡があって、午前9時半には、会見場にご案内したいそうです”……

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 1962(昭和37)年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004(平成16)年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』で衝撃的なデビューを飾る。同作をはじめとした「ハゲタカ」シリーズはテレビドラマとしてたびたび映像化され、大きな話題を呼んだ。他の作品に『プライド』『黙示』『オペレーションZ』『それでも、陽は昇る』『プリンス』『タイムズ 「未来の分岐点」をどう生きるか』『レインメーカー』『墜落』『タングル 』など多数。
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