Weekly北朝鮮『労働新聞』
Weekly北朝鮮『労働新聞』 (74)

観光地開発の遅れに激怒した金正恩、担当閣僚を「法機関に引き渡す」(2024年7月14日~7月20日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年7月22日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
三池淵を訪れた金正恩国務委員長は、空港の改修、観光鉄道の敷設、道路の拡張や舗装など多岐にわたる指示を出した(『労働新聞』HPより)
パンデミック前に力を入れていた観光業の振興に再び関心を強くした金正恩国務委員長は、国内各地へ現地指導に訪れている。そのうち、革命の聖地とされる三池淵では責任者の職務怠慢を厳しく叱責し、国家建設監督相の李順哲らを法機関に引き渡して調査するよう指示した。外交では、ロシアの国防次官と一対一で面会する異例の厚遇を見せた。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の動静報道が目立つ1週間となった。14日付は、中国と国境を接する白頭山(ペクトゥサン)の麓に位置する三池淵(サムジヨン)市での現地指導について報じた。金正恩は2021年11月に同地を訪れて同市を「革命戦跡踏査地区、観光地区」として立派に建設するよう指示しており、その後の状況を「具体的に確認」するための再訪となった。

 金正恩は、「指導幹部の無責任さとそれによって生じた一連の重大な偏向について厳しく指摘」したという。「新たに建設された国内観光客のための旅館を見て回り、発展する時代の要求に根本的に反して古くて立ち遅れた基準でいい加減に施工したことについて厳しく指摘した」「無責任な行為を働いた建設監督機関の甚だしい職務怠慢を厳しく批判した」との言及も見られる。

 金正恩の怒りは相当なものと見られ、「国家建設監督相の李順哲(リ・スンチョル)は竣工検査が始まった昨年12月から現在までたった一度も三池淵市に足を運ばず現地指揮部の幹部だけに放任し、国家建設監督省の前副相なる者は現地に居座って無責任な態度で無為徒食した」として、彼らを「ただちに法機関に引き渡して調査するよう指示した」という。他にも竣工検査委員会のメンバー全員を「厳格に問題視する」、内閣副総理らが平壌市の住宅建設に偏重したとして「趣味本位の観点と活動能力も当然再調査されるべき」といった金正恩の言葉が紹介された。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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