オペレーションF[フォース]
オペレーションF[フォース] (80)

連載小説 オペレーションF[フォース] 第80回

執筆者:真山仁 2024年8月31日
タグ: 日本
エリア: その他
(C)時事[写真はイメージです]
国家存続を賭けて、予算半減という不可能なミッションに挑んだ「オペレーションZ」。あの挫折から5年、新たな闘いが今、始まる。防衛予算倍増と財政再建――不可避かつ矛盾する2つが両立する道はあるのか? 目前の危機に立ち向かう者たちを描くリアルタイム社会派小説!

【前回まで】北朝鮮から発射されたミサイルの弾着予想地点は東京湾――。必死の迎撃にもかかわらず、ミサイルは東京湾に落ち、タンカーが被弾。その時、日本は何ができるのか?

 

Episode7 独立独歩

 

8

 都倉を乗せた公用車が、官邸に迫ってきた。

 車内では、樋口と磯部が時々刻々と更新される情報を、逐次都倉に伝えている。

 命中したタンカーは、積み荷の原油を運び終えた後だったので、広範にわたる被害は免れた。

 だが、10人ほどと思われる乗組員は、全員絶望的。

 日本海側の海上及び航空自衛隊基地は、臨戦態勢の準備を進めている等々……。

 それらを聞きながらも都倉の脳裏には、深刻な疑惑が湧き上がっていた。

 ――ブルは大風呂敷を広げるオッサンだから、分からないわよ。何か事件が要るんじゃないの?

 劉唯は、日本国民が、国家の防衛に真剣になるためには、もっと深刻な事件が必要だとほのめかした。

 その上で、「こっちでも、何か方策を考える」とまで言った。

 それが、これなのか。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
真山仁(まやまじん) 小説家 1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な裏側を描いた『ハゲタカ』でデビュー。同シリーズはドラマ化、映画化され大きな話題を呼んだ。『マグマ』『ベイジン』『黙示』『売国』『ロッキード』『当確師 正義の御旗』など著書多数。最新刊『アラート』は「日本の未来を守る」ための安全保障がテーマの長編ポリティカル・フィクション。
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