ムンクの「叫び」そっくりのミイラ女性 死亡直後の様子が明らかに?

2024年8月18日
カテゴリ: 医療・サイエンス
エリア: アフリカ
ミイラは古代エジプトの新王国時代(紀元前1500年頃)の女性と考えられる[エジプト・カイロのエジプト博物館](C)Sahar Saleem/Reuters
1935年に行われた古代エジプトの考古学調査で、類まれな姿のミイラが発見された。ルクソール近くのデイル・エル・バハリで見つかったもので、口をあんぐりと開けたまま苦悩の悲鳴をあげているかのような姿の女性だった。それから100年近くを経て、ついにこのミイラが叫ぶような表情をするに至った経緯に焦点が当てられている。

[ロイター]CTスキャンを使った「仮想解剖」により、このミイラの女性は死の瞬間に死体痙攣(けいれん)と呼ばれる稀な種類の筋肉硬直に見舞われた可能性が示唆された。女性は激しく苦しみながら死んだ可能性がある。研究成果は8月2日に医学誌「Frontiers in Medicine」に発表された。

 研究を主導したカイロ大学の放射線学教授サハル・サリーム氏は、女性は死亡時に推定48歳で、軽度の脊椎関節炎を抱え、一部の歯を失っていたと述べた。

 さらにサリーム氏によると、遺体の保存状態は良好だった。防腐処理されたのは約3500年前。当時は古代エジプト文明が最も栄えた新王国時代で、杜松油やフランキンセンスの樹脂などの高価な輸入材料が使われていた。

 古代エジプト人は、死後の体を保存することは、死後の世界で豊かに暮らすために必要不可欠な工程だと考えていた。通常、ミイラを作る過程では心臓以外の内臓が取り除かれたが、この女性の場合はそうした処置が行われていなかった。「古代エジプトのミイラ職人たちは、死者の体が来世で美しく見えるように細心の注意を払っていた。そのため、通常の死後硬直によって遺体の顎が開かないよう、顎を頭に縛りつけて口を閉じるようにしていた」(サリーム氏)。

 ならば、この女性の遺体を扱ったミイラ職人は、口を閉じる工程を怠ったのだろうか。そうではないとサリーム氏は推測する。

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