取り残される新型コロナ後遺症患者

2024年12月15日
病院で治療を受けるシャノン・ターナー氏。ロングCOVIDと乾癬性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、その他の自己免疫疾患が相互作用することで悪循環が生まれ、入退院を繰り返している[2023年5月3日、アメリカ・フィラデルフィア](C)REUTERS/Leah Millis
後遺症の長期化に悩む患者は、世界中に何千万人もいると考えられている。最近の研究では、こうした患者が直面する現実にスポットライトが当てられている。症状が長引けば長引くほど、完全回復の可能性が低くなることが分かってきた。

[ロンドン発/ロイター]ケニアの実業家ワチュカ・ギチョヒ氏(41)は4年間にわたり、新型コロナウイルス感染の後遺症に悩んできた。強い倦怠感や体の痛み、パニック発作、そして夜明けには死んでしまうのではないかと思えるほど痛烈な、その他の症状もあるという。

 そんな彼女にとっては、「早く元気になって」「一日も早いご回復を心からお祈りしております」といった当たり障りない定型句も、耳にするのは辛い。良かれと思っての言葉であることは分かっている。「でも私の場合は、回復することはありえないのだと受け入れるしかない」とギチョヒ氏はいう。

 新たに英国と米国の研究チームが学術誌『ランセット』に発表した研究では、新型コロナウイルス感染後の6カ月間が最も回復しやすく、初期症状が軽かった患者やワクチンを接種した患者の方が回復の可能性が高いと分かった。一方で、症状が6カ月〜2年続いた患者の回復率は低下する。

 そして症状が2年以上続くと完全回復の可能性は極めて低くなると、リーズ大学リハビリテーション医学教授で論文の著者であるマノージ・シヴァン氏は話す。 シヴァン氏は、こうした状態を「持続型の後遺症(ロングコビッド)」と呼び、慢性疲労症候群や慢性的な線維筋痛症などと同様の慢性疾患として捉えるべきだと述べている。  

関心の低下

 ロングCOVIDは、新型コロナウイルス感染後3カ月以上にわたり症状が続く状態として定義される。強い倦怠感、頭がぼんやりする「ブレインフォグ」、息切れ、関節痛など、さまざまな症状が含まれる。軽度の場合もあれば生活に大きな支障が出る場合もあり、今のところ確立された診断方法や治療法はない。しかし、リスクが高い人や原因について研究が進んできた。 

カテゴリ: 医療・サイエンス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
  • 24時間
  • 1週間
  • f