Weekly北朝鮮『労働新聞』 (98)

訪朝した在日朝鮮人学生少年芸術団への「特大の配慮」(2025年1月5日~1月11日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年1月14日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
昨年1月の施政演説で「地方発展20×10政策」が示されてから1年、地方振興の重視は変わらない[黄海南道載寧郡の工場でテープカットを行う金正恩国務委員長=2025年1月7日](C)AFP=時事
北朝鮮では今年10月10日に朝鮮労働党創建80周年を迎える。これと来年初めに開催が見込まれる第9回党大会が次の重要な節目になる。6日に行われた2025年最初のミサイル発射実験には金正恩国務委員長の娘も立ち会った。総聯系の在日朝鮮人による日朝往来は昨秋から再開されたが、日本政府の独自制裁によって総聯幹部らが渡航を控える中、新年に訪朝した朝鮮学校の学生・生徒には「特大の配慮」がなされたという。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

地方発展20×10政策」の成果として地方工業工場の竣工式が立て続けに挙行された。1月8日付は、黄海(ファンヘ)南道の載寧(チェリョン)郡でのセレモニーに金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が出席してテープカットを行ったと報じた。朴泰成(パク・テソン)内閣総理らも参加したが、竣工の辞を述べたのは、朝鮮労働党中央委員会の朱昌日(チュ・チャンイル)宣伝扇動部長であった。

 9日付は平安(ピョンアン)南道の粛川(スクチョン)郡、11日付は黄海北道の銀波(ウンパ)郡で行われた地方工業工場の竣工式について伝えた。金正恩の参席はなく、竣工の辞はそれぞれの道の党委員会責任書記によって述べられた。

 地方振興が重視される一方で、約2カ月ぶりにミサイル発射実験も再開された。7日付は、共和国ミサイル総局によって前日実施したという新型の極超音速中長距離弾道ミサイル発射実験について報じた。「新たな炭素繊維複合材料」が使用され、「新たな総合的で効果的な方式」が導入されたという。「画像監視システム」で立ち会った金正恩は、「太平洋地域の任意の敵どもを頼もしく牽制する」ものであると評価した。掲載写真からは、金正植(キム・ジョンシク)党軍需工業部第1副部長とともに金正恩の娘の姿も確認できる。

 現在、北朝鮮が重要な節目と位置付けているのは、10月10日の党創建80周年と、来年初めに開催が見込まれる第9回党大会である。

 6日付第4面には「母なる党の創建記念日を労力的偉勲で迎えることはわれわれ人民の誇らしい闘争伝統である」と題する記事で、1945年の党創建から10年ごとに主に経済的成果が整理された。

 また、10日付第1面には、党創建80周年に向けて党員が果たすべき役割について論じる梁順(リャン・スン)記者による署名入り論説が掲載された。党員は、最大限に増産、節約して多くを創造するうえで先頭に立つべきであり、人々を喚起して鼓舞する役割があることを強調しつつ、やはり最も重点が置かれたのは、金正恩に忠誠を誓って一生を捧げるべきだという内容であった。「自らの領導者を奉る忠誠の一途な心(原文は「一片丹心」)」こそが党員の「第一の生命」であり「第一の本分」なのである。

 2日に金正恩が在日朝鮮学生少年芸術団を党中央委員会本部庁舎に招き入れたことに関する、その後の記事も整理しておきたい。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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