十八世紀のヨーロッパにおいて、人間学があらゆる学問の基礎になると強く主張したのは、イギリスの哲学者デイビッド・ヒューム(一七一一―七六)である。 ヒュームは、人間界についてはもちろん、自然界についても、それを知覚し理解するのは人間なのであるから、私たちはまず「人間とは何か」ということから考察しなくてはならないと考えた。そして、人間は、聖書に即して神秘的に理解されるのではなく、ニュートンの方法、すなわち経験と観察を通じて理解されるべきだと考えた。彼の『人間本性論』(一七三九―四〇)は、こうした目的と方法にもとづいて書かれた人間学の金字塔である。

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