「米国に代わって世界最大の消費市場に!?」 トランプ相互関税を中国人はどう見るか

IN-DEPTH【ニュースの深層】

執筆者:高口康太 2025年4月4日
タグ: 中国 トランプ
エリア: アジア
第一次トランプ政権時の米中貿易戦争は中国が譲歩する形になったが…[2025年4月3日、急落したハンセン指数の株価を示す電子ボードの横で携帯電話を確認する男性=中国・香港](C)AFP=時事
中国政府の公式発表はもちろん「断固反対」。だが、米国があくまで貿易赤字ゼロを目指すなら、別の国が消費市場となるしかない。いまこそ中国過去40年の成功ストーリーが世界にとって意味を持つという議論。あるいは逆に、いよいよ窮地の中国政府が官製バブル作りに本気を出すぞとの期待感も。

 トランプ政権の「相互関税」を中国はどう見ているのだろうか?

 中国商務部は「中国は断固反対し、報復措置によって中国の権益を擁護する」との声明を発表した。中国外交部の郭嘉昆報道官は「WTO(世界貿易機関)ルールの重大な違反であり、ルールベースの多国間貿易体制を毀損するもの。必要な対応策を採り、正当な利益を確保する」とコメントしている。

 この言葉通り、中国はなんらかの報復関税をかけるであろうし、あるいは今年2月に発表したグーグルに対する独禁法違反の調査のような形での対抗策を採ることも考えられる。だが、それは報復措置によって米国の関税引き上げを抑止するというよりも、殴られっぱなしで反撃しないのはメンツに関わるといった体面の問題に過ぎない。第一次トランプ政権では2018年から2019年にかけて、米中が互いに関税引き上げを繰り返す貿易戦争が繰り広げられたが、最終的には中国側が譲歩する形で決着した。中国政府はこの轍は踏まないだろう。

 報復関税はメンツのためのポーズであるとするならば、相互関税のダメージはどのように緩和するべきか。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
高口康太(たかぐちこうた) 1976年、千葉県生まれ。ジャーナリスト、千葉大学客員教授。千葉大学人文社会科学研究科博士課程単位取得退学。中国・天津の南開大学に中国国費留学生として留学中から中国関連ニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。中国経済と企業、在日中国人経済を専門に取材、執筆活動を続けている。 著書に『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界 』(文春新書、共著)、『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、共著)、『中国S級B級論』(さくら舎、共著)、『プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、共編、大平正芳記念賞特別賞受賞)、『中国「コロナ封じ」の虚実 デジタル監視は14億人を統制できるか』(中公新書ラクレ)、『習近平の中国』(東京大学出版会、共著)など。
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