
第二次トランプ政権誕生後の米中関係では何が主要テーマとなるのだろうか? さまざまなトピックがあるが、最大のテーマは「貿易不均衡」になるとにらんでいる。
2月21日、中国の何立峰(ホー・リーフォン)副首相と米国のスコット・ベッセント財務長官が電話会談を行った。この会談では何が焦点となったのか? 中国側は「中国に対する関税引き上げなどの制限措置に強く注目している」と申し入れたことを発表している。一方の米国側は「ドラッグ対策、貿易不均衡、不公平な政策」に懸念を表明した。この3点の順番はそのまま米国の優先順位を示しているとみていい。
「フェンタニル」などのドラッグ蔓延が米国では社会問題となり、大統領選でも主要な争点の一つとなった。有権者へのアピールとして、最優先事項にあげられているのは理解できる。それに続く第2のフォーカスが「貿易不均衡」なのだ。
「チャイナショック2.0」は過去とどう違うか
2024年、米国の貿易赤字は過去最大となる1兆2117億ドルを記録した。貿易赤字の最大の相手国は中国だ。そして、中国の貿易黒字もまた過去最高、9921億ドルを記録した。中国からあふれでる輸出の嵐は「チャイナショック2.0」の懸念を招いている。
もともとの「チャイナショック」とは1990年代末から21世紀初頭にかけて、中国からの労働集約的な工業製品の輸入が急増し、米国内における雇用を減少させたことを指す。マサチューセッツ工科大学教授のデヴィッド・オーター教授らの研究では、米国で200万人もの失業をもたらしたと推計されている。その直撃を受けたミシガン州やペンシルベニア州はラストベルト(さびついた工業地帯)と呼ばれるようになった。
このチャイナショックは2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟に強く後押しされたが、輸出した国は中国でも、企業は中国企業ばかりではなかった。むしろ、中国に製造拠点を構えた多国籍企業が中心であった。先進国の労働者にとってはダメージをもたらしたという側面もあるが、企業にとっては利益となったとも言える。
短期間で急激に中国の輸出が増加したチャイナショックの後も、中国の貿易黒字が減ったわけではない。貿易不均衡は一貫して重要なテーマであり続けた。第一次トランプ政権(2017~2021)でも貿易不均衡は重要な外交テーマで、米中両国は互いに関税を引き上げる貿易戦争を繰り広げた。
その後のバイデン政権ではサプライチェーンの中国依存脱却、半導体製造の米国誘致に代表される産業政策に重点が移ったが、トランプ政権下で導入された関税は維持されるなど、貿易不均衡が軽視されたわけではない。
こうして、現在の第2次トランプ政権とチャイナショック2.0の時代にいたる。過去の貿易不均衡と比較すると、プレイヤー、製品、そして貿易構造という3つの変化が重要だ。

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