
陸から見えないために実感がわきにくいものの、気候変動にともない海の中は劇的に変化している (C)aquapix/stock.adobe.com
気候変動の影響は世界中の海に広がり、沿岸生態系も大きな変容を遂げつつある。特に日本の太平洋沿岸は、世界的に見ても海水の温暖化が最も早く進んでいる場所の一つである。かつては生息していなかった地域で造礁サンゴ(以下サンゴ)の仲間が次々と見つかり沿岸の景観を大きく変えている。熱帯域では、サンゴ礁生態系によって維持されていた海洋生物多様性を高水温ストレスが大きく脅かす中、その影響が比較的少ない温帯域の沿岸は、サンゴやサンゴ礁生態系に生息する種の避難所として期待されている。
しかし実態はそれほど単純なものなのだろうか? 本稿では、日本近海の熱帯から温帯域にかけて起きている気候変動にともなう沿岸生態系の変化について概要を示す。同時に、サンゴの最北限域の一つである静岡県沼津市周辺(駿河湾内浦)での調査を中心に、温帯サンゴの北上の裏で縮小するサンゴ種の存在と生態系への影響、そして我々人間社会がどのように対応していくべきかについて考えてみたい。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン