火中の栗を拾った「稲盛和夫」が試される晩節

執筆者:安西巧 2010年3月号
タグ: 日本
エリア: アジア

JAL再建の舵をとるのは、西郷隆盛を尊敬するカリスマ経営者。無力感が漂う社員の心をひとつにまとめ、“順航”に導くことができるか。 二月二日、羽田空港(東京都大田区)に隣接する日本航空(JAL)の航空機整備場を、前日会長に就任した稲盛和夫(七八)が視察に訪れた。「安全運航を支える縁の下の力をつぶさに見た。彼らが働きがいのある職場に変えていくことが大切」と帰り際に稲盛は語った。 破綻したJALの負債総額は二兆三千二百億円と金融機関を除く事業会社としては過去最大。内紛の絶えない経営陣、八つに分裂している労組、政治家や官僚とのしがらみ、老朽化が深刻な機材――。抱える病巣を数え上げればキリがない。まさに“火中の栗を拾う”形で請け負ったJAL再建の初仕事に整備場視察を選んだのは、現場重視の「アメーバ経営」(社員一人一人がアメーバのように全体調和を目指して能動的に働く)を標榜する稲盛らしい。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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