饗宴外交の舞台裏 (28)

「鬼門の地」エルサレムで政治家ぶりを見せた法王

執筆者:西川恵 2000年4月号
タグ: イスラエル
エリア: 中東 ヨーロッパ

 ローマ法王ヨハネ・パウロ二世が三月二十日から二十六日まで、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを歴訪した。法王は二月、預言者モーゼが「十戒」を授かったシナイ山(エジプト)を訪れたのを皮切りに聖地巡礼を行っているが、イスラエルとパレスチナの訪問は最大のハイライトでもあった。

 中東和平交渉をめぐる綱引き、ユダヤ教徒とキリスト教徒の歴史的確執と、政治、宗教、民族の対立が渦巻くこの地を訪れる法王はどのようなメッセージを投げるのか。各国の耳目が法王の一挙手一投足に集まった。というのも、この地では何人もの外国の首脳がその言動で痛い目にあっているからだ。イスラエル側にもパレスチナ側にも踏み外すことは許されない。ここでは地雷原を行くがごとき繊細な神経とバランス感覚が要求される。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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